皆さん、殿筋の収縮が弱く、運動指導で殿筋へのアプローチを実施すると思います。しかし、狙った筋肉「大殿筋」へ本当に収縮ができているのか?ハムストリングス優位でのヒップアップとなっていないか?を確認する必要があります。
ここでは、殿筋群(大殿筋、中殿筋)を中心に述べていきます。
大殿筋の筋力評価は徒手筋力検査(MMT)にて行うが、筋力評価時には股関節と膝関節の角度に注意して実施する必要があります。
股関節伸展筋群には、大殿筋のほかに大腿二頭筋の長頭、半腱様筋、半膜様筋、大内転筋の後頭があります。大内転筋の後頭は大腿二頭筋と似た走行であるため、股関節伸展の強く作用します。
ヒップアップが特に簡単に運動療法で実施されることが多いですが、大殿筋のほかにハムストリングスや背筋群の活動が高く、股関節や膝関節角度により狙った筋肉が働かない為、注意が必要です。
そこで、ベッド上から背臥位で下腿をベッドから降ろし、足部を低い位置にした肢位からヒップアップを行うと、大殿筋の筋活動が増加し、脊柱起立筋と大腿二頭筋の筋活動が減少することが文献から示されています。
下腿をベッドから降ろすことに加えて、頭部を挙上をることで、脊柱起立筋の筋活動が大きく減少し、さらに大殿筋の筋活動が増加します。
すなわち、大殿筋を優位に働かせるには、膝関節を屈曲位にし、股関節の屈曲角度は伸展位で、ハムストリングスや大内転筋後頭の代償を少なくした状態で、股関節の伸展、ヒップアップを行うことが重要です。
また、実際に狙っている筋肉に収縮があるかどうかを触診にて確認しなければいけません。実際にヒップアップを行うと、ハムストリングス優位の活動が多く、よく大腿後面がこむら返りが起こる場面に遭遇します。
高齢者に運動療法を実施する場合は、運動負荷を考慮し効率の良い方法を常に考えなければいけません。殿筋を鍛えるために、ヒップアップを行うのは簡単ですが、スクワットやレッグプレスなど患者一人ひとりに合わせたプログラムを立案するように自分自身も考えながら、実施しています。
▶運動療法のポイント
大殿筋の収縮を促すトレーニングを行う場合、二関節筋であるハムストリングスの活動や多裂筋の過剰収縮による腰椎の過前弯、骨盤前傾などを抑制しながら、大殿筋の活動を促していくことが必要です。