腓腹筋内側頭と外側頭、ヒラメ筋の3つの筋を合わせた下腿三頭筋と足底筋は、下腿後面を下行し、アキレス腱となって踵骨隆起に付着します。
下腿三頭筋は足関節底屈筋群であり、アキレス腱はその張力を踵骨に伝達しています。これにより、歩行や走行の立脚相やジャンプの着地といった動作で、足関節が背屈すると、下腿三頭筋は遠心性収縮を強いられます。
下腿三頭筋の強い張力によって、アキレス腱に強い伸張力が加わると、筋断裂を起こします。
下腿三頭筋の断面積は、足関節底屈に作用する屈筋群の75%を占めています。通常、腱は筋腱移行部もしくは腱骨移行部にのみ血流が存在し、アキレス腱の栄養状態を保っています。
アキレス腱損傷の80%は、踵骨付着部の2~6センチ近位部で発生しています。この領域は血行が不十分で、筋の断面積がもっとも小さくなっており、血行が不十分となるためと考えられています。
受傷時には、「ふくらはぎをバットでたたかれた感じ」や「ボールが当たった感じ」などの衝撃を感じることが多く、断裂した時の音を自覚することがあります。
受傷直後は断裂した足側に体重をかけることができずに歩行不能となったりします。しばらくすると歩行可能となることも少なくありません。 もし歩行が可能な場合でもつま先立ちはできなくなるのが特徴です。
アキレス腱が断裂していても足関節は動かすことは出来ます。
アキレス腱断裂しているかを評価する方法としてトンプソンテストが有名です。これは、症例を腹臥位で膝関節90°屈曲させ腓腹筋中央部を把持することで、足関節が底屈するかを観察します。
検査が陽性であれば、足関節の底屈はみられず、背屈位のままで把持部位に圧痛がみられます。
陰性ならば、足関節の底屈が出現し痛み自体も強くありません。
画像所見ではレントゲン画像では筋断裂を診ることは難しいため、MRIでの診断となります。
実際に断裂した場合は保存療法と直接腱を繋ぎ合わす方法の2種類があります。