肩関節の痛みを誘発するものとして、腱板損傷や肩峰下インピンジメントがありますが、その他に上腕二頭筋長頭腱がストレスを受け炎症を起こし痛みを誘発する場合も臨床経験上少なくありません。
ではなぜ上腕二頭筋長頭腱が炎症してしまうのかについて説明していきます。
上腕二頭筋長頭腱は大結節と小結節との間に形成される結節間溝を通過し、そのまま肩関節内に入っていきます。そして肩甲骨の関節上結節ならびに上方関節唇に付着しています。
結節間溝を通過する上腕二頭筋長頭腱は、腱鞘に囲まれることで、二頭筋の滑走による摩擦を軽減しています。しかし、このような狭い空間で筋の弛緩と収縮を繰り返すことで機械的な刺激量が増加するため同部位での炎症が生じやすいと考えられています。
また、上腕二頭筋長頭炎が生じているか評価するためにはどうすればよいか説明していきます。
上腕二頭筋長頭炎の評価として、スピードテストとヤーガソンテストが存在します。
・スピードテスト:
座位姿勢で前腕回外位にて肩関節を軽度屈曲とし、検者はこれに抵抗を加えて結節間溝周辺で生じる疼痛を評価します。
目的として、肩関節屈曲運動を利用して上腕二頭筋長頭を収縮させることで、疼痛が生じるかを確かめることに意義があります。
・ヤーガソンテスト:
座位姿勢で肘関節を90°屈曲位にして、患者の前腕は回内位から、検者の抵抗に抗して回外運動を行った際に、結節間溝周辺で疼痛が生じるかを確認します。
目的として、上腕二頭筋が回外作用を利用して上腕二頭筋長頭を収縮させ、その張力が刺激となり肩関節の疼痛が生じるかを確かめることに意義があります。
また、これらの評価に加えて、実際に結節間溝部に触診にて圧を加えると痛みが出現することが多いです。これらの評価を踏まえたうえで、治療法の選択と患者自身の日常生活動作の指導を行うことが重要となります。
機能的解剖学と上腕二頭筋の作用に注目して疼痛の評価を正確に判断していく必要があります。