臨床場面で着座時にドスンと座られる症例が多く観察されます。
実際にゆっくり座ってくださいと指示しても、動作が安定せず、腰椎過伸展での代償や足部で作られる支持基底面内に身体重心を保持できないことがよく観察されます。
着座動作が安定するために必要な身体要素として、下腿の傾斜角度を前脛骨筋とヒラメ筋の協調性運動による身体重心の前後方向への制御、大腿四頭筋の筋発揮による膝関節固定、体幹支持に作用する多裂筋や胸椎の伸展筋の活動など、要因は数多く挙げられます。
これら要因がひとつの動作の中で同時に観察されるため、セラピスト側の観察力と原因の評価は難しいものとされています。
自身が着座が安定しない、ドスンと座ってしまう症例に対してどのように評価、アプローチしているかを紹介させていただきます。
①静止立位から骨盤を後傾させながら、下腿を前方に傾斜させ膝関節を屈曲させる
②体幹を前傾に傾斜させながら、骨盤も前傾させる
③下腿上で大腿骨を後方へ回転させるが、下腿の傾斜角が変化しないように介助者が操作する
④着座まで骨盤前傾を誘導しながら、坐骨が座面にゆっくりとつくように操作する
これら要因をすべて一度に評価するのは何度も難しいため、何度もくりかえし実施することで、症例の苦手な部分、要因が把握できるようになります。
加えて体幹前傾時の腰椎のアライメントが制御できているかも観察するべきだと考えています。多裂筋と大腰筋が協調して活動することで椎体が固定された状態で体幹前後傾を行うことが、より動作を安定させる要因となるため、腰椎が中間位での動作遂行が可能であるかを評価していきましょう。