健常者においても、様々な因子が肩甲上腕リズムに影響を与えることがわかっています。影響を与える因子として、上肢挙上の速度と年齢、疲労などが挙げられます。
例えば、上肢挙上の速度の影響について考察していきます。
低速での上肢挙上(上腕骨と肩甲上腕リズム)の比率として、2.3:1でありますが、高速での上肢挙上は挙上開始時約3.0:1であり、挙上するにつれ減少し1.5:1となります。
年齢と肩甲上腕リズムとの関係をみると、成人2.4:1に対して、若年者1.3:1であり、若年者は成人よりも肩甲上腕リズムが小さい傾向があると論文から示されています。
一方、加齢とともに胸椎後弯や肩甲帯機能が変化し、肩甲骨の位置が変化することも示唆されています。
また肩甲上腕リズムに影響を与える因子として、疲労が挙げられます。
疲労後の肩甲骨運動に関して、上肢挙上運動や肩関節の疲労するまで繰り返し運動を行った後、上肢挙上時の肩甲骨運動を観察する方法で研究が行われています。
研究によると、挙上運動の繰り返し後、肩甲骨の上方回旋が増加し、肩甲上腕リズムが減少したと報告があります。
これらの要因が、肩甲骨運動の変化とインピンジメント症候群などの疾患との関連は明らかではないです。しかし、肩関節運動をアシストする際に一人一人に合わせた治療を選択できる可能性があるため、治療の一助となればと思います。