肩関節に生じる痛みは、自発痛と運動時痛の2種類に分類されます。
●自発痛:組織の退行変性に伴う局所の炎症、外傷が原因で起こるもの
●運動時痛:肩峰下、関節内インピンジメント、筋の収縮時痛、軟部組織の伸張痛で起こるもの
自発痛は、肩関節運動や日常生活動作の有無にかかわらず、安静にしている場面でも痛みが生じる痛みであり、安静時痛と呼ばれます。夜間の安静時痛みを夜間痛と呼ばれ、安静時痛・夜間痛ともに自発痛の分類に分けられます。
自発痛の特徴として、痛みの部位が限局せずに広範囲位に生じるのが特徴です。痛み自体は組織の修復による炎症反応が治まると自然に軽快しますが、肩関節周囲炎や腱板断裂の変性疾患では、痛みが数か月続き、慢性的な経過となる場合も比較的多いです。
自発痛の原因としては炎症や、外傷、肩関節周囲組織の退行変性を基盤としており明らかな要因がなくても痛みが出現することもあります。
痛みが生じている場合は安静にすることが基本で、患側上肢での日常生活動作や積極的な活動は避けることが重要です。背臥位にて就寝し、上肢の下にタオルを挟んでおくことが望まれます。
運動時痛の代表的な疾患として肩峰下インピンジメントが有名です。
肩峰下インピンジメントは、上肢挙上時に腱板や滑液包、上腕二頭筋長頭腱が烏口肩峰アーチと上腕骨との間で挟まれたり、摩擦が生じたりする現象のことです。
特徴として、上肢挙上に生じる痛みで、肩峰下から上腕の近位にかけて生じることが多いです。
原因として、関節拘縮や腱板機能低下が挙げられます。これらの機能低下は上腕骨頭の異常運動を引き起こし、インピンジメントを引き起こす原因となります。
自発痛や運動時痛ともに、肩関節周囲の機能面を評価するだけでなく、姿勢アライメントは正常か、肩甲胸郭関節の協調運動が起こっているかを確かめたうえで患者の動作指導や日常生活指導、治療の選択を行っていく必要があります。
異常なアライメントから上肢挙上を行うと、肩関節特に肩峰下インピンジメントが生じやすくなるため、負荷が一点集中とならないように注意が必要です。