脊柱管狭窄症の原因について、前回のブログで紹介しました。明確な運動療法やアプローチのエビデンスがない中でどのように運動療法を提供していくかを考えていきます。
脊柱管狭窄症は加齢に伴う退行性変化が基盤に症状を呈している病態です。まず、脊柱管狭窄症と診断された方に理学療法評価だけでは身体状況の把握が難しいと思います。まず、単純X線画像による腰椎分離、滑り、側弯や脊椎変性を評価すること、そして椎間板の高さに異常がないかを確認することが最優先となります。
そして、CTやMRI撮影を行えるのであれば、必ず確認していく必要があります。MRI画像にて圧迫骨折や腫瘍、感染状況などを確認すること、CTでは骨性の狭窄を診断しやすいため、骨棘や分離症の評価も可能となります。CTとMRIを合わせて変性や神経の狭窄を見ることで、脊柱管の状態を知りえる手段となるため自分は必ず確認しています。
しかし、画像は安静臥床で撮影されるため、臨床症状と理学療法評価が合致しないことが多々あります。実際、狭窄症という症候群での診断であるため、いまだに解明されていないのが現状です。
その中で、患者様に対して何ができるのか?という疑問が浮かぶと思います。
治療の選択肢としては手術療法、保存療法にて運動療法を選択することが挙げられます。実際、手術療法を選択される場合は、なるべく早く治療することが重要です。罹患期間が長いと、下肢痛や間欠性跛行が十分に改善を得られない可能性があるからです。しかし、すぐに患者様に手術を勧めても痛みや侵襲が怖いなど、信頼関係も築いてない中で、納得してもらうことは難しいと思います。
初期治療は保存療法が原則で、運動療法による神経症状が改善されない、または無効の場合に手術を推奨していくことが段階的に必要であると思います。患者様とセラピストとは接する時間が長く、信頼関係を築きやすいとも言えます。Drからの身体状況の説明だけでなく、セラピストが患者様を不安にさせないように傾聴すること、そして安静時の下肢痺れは改善しにくいなどの説明を行っていくことも個人的に必要だと感じています。
エビデンスはないけれど、運動療法による間欠性跛行の改善や歩行距離の延長は文献などから多くはないですが、直近で報告されています。脊柱管狭窄症を有するのは高齢者が多く、有酸素運動や運動の機会を獲得することは身体的な廃用予防やフレイル予防に繋がると思うので、運動療法はするorしない選択肢ならば「運動する」一択ではないでしょうか。
そして、治療内容ですが体幹筋による椎体の安定性と動的な制御向上と姿勢アライメント修正、歩容改善を中心に自分は治療を提供しています。一番重要視しているのが、腰痛を有している患者様は体幹筋の神経反応速度が低下している場合が多い為、ドローインやブレーシングで腹横筋へのアプローチを実施してから、四肢運動を行うことをルーティーンにしています。
実際にセラピストが運動療法を提供し、経時的な改善が見られない場合、馬尾症状や我慢できない疼痛がある場合は手術を選択する方法もあると、患者様に事前に相談していくことも重要です。手術を勧めること自体はDr判断ですが、患者様の意思確認はセラピスト自身が可能であるため、Drと情報共有し治療法を考えていくこともセラピストの役割であると思っています。