脊柱管狭窄症の症状として、間欠性跛行が一番に浮かぶと思います。脊柱管の狭窄による神経症状として表れますが、なぜ脊柱管の狭窄が起こるのか?原因は何なのか?と疑問に思う方がいると思います。
結論から言うと、原因は硬膜外静脈叢のうっ滞・還流障害であると言われています。硬膜外静脈叢とは、脊柱管の周りにある静脈を指しています。この硬膜外静脈叢が存在することで、網目状に枝を伸ばし、神経根などへ血流循環を行っていますが、これが阻害されると、神経機能が低下してあらゆる症状を引き起こすと考えられています。
そして、硬膜外静脈叢のうっ滞・還流障害がなぜ起こるのか?ということですが、原因として2つに分けられます。構造的原因と非構造的原因があり、それぞれ解説していきます。
・構造的原因:構造物による直接圧迫と脊柱管面積の減少(滑り、骨棘、黄色靭帯の肥厚、変性など)
・非構造的原因:①腰椎の前弯増強 ②pumping effectの低下
構造的原因に対してセラピストが直接的な介入は困難なため、非構造的原因に対してのみアプローチが可能です。
非構造的原因①腰椎の前弯増強ですが、前弯増強することで硬膜外圧が上昇し、脊柱管の狭窄を引き起こしてしまいます。また、滑り症や黄色靭帯の肥厚などで脊柱管への直接圧迫と脊柱管面積が低下することも、腰椎前弯増強と並び、硬膜外静脈叢の虚血を引き起こす原因として挙げられます。
言い換えれば、硬膜外静脈叢の虚血は姿勢による影響が大きいと言えます。
もう一つの原因②pumping effectの低下ですが、静脈還流の量が低下=ポンプ作用が低下することで神経症状を引き起こすと言われています。脊柱の柔軟性が低下してしまうと、腰椎自体の前弯、後弯方向への可動が少なくなります。これによって、筋の収縮によるポンプ作用低下と同様に硬膜外静脈叢の還流障害が引き起こされます。
脊柱、特に腰椎の前弯だけに注目するのではなく、後弯への可動性確保と両方向へのコントロールが出来ることが硬膜外静脈叢の還流を保つには重要であると言えます。
脊柱管狭窄症と診断され、実際に間欠性跛行の症状がある患者様は、「腰椎前弯角は小さく、立位姿勢は体幹前傾となる」という文献や、実際の臨床場面で上記姿勢アライメントを呈している場合が多く、先ほど述べたような姿勢による影響が神経症状を引き起こしている要因として大部分を占めていると思います。
脊柱管狭窄症に対するアプローチとして明確にされていないのが現状です。また、画像所見と臨床症状の不一致は自分自身結構な数を経験してきました。不明確な部分は多々ある中で、アプローチしていく難しさがありますが、理学療法評価とアプローチによる即時、経時的な変化は捉えていかなければならないと個人的に思います。