人の姿勢制御として、床面が一過性に前後左右方向の移動したり傾斜したりすると、身体には平衡を取り戻すための3つの姿勢制御とそれに伴う協同収縮筋活動が観察されます。
システム理論では、これらを運動戦略とし、それぞれ足関節戦略、股関節戦略、踏み出し戦略と呼ばれます。
3つの運動戦略と協同収縮筋活動は、運動課題や環境条件などに応じて変化していきます。
・足関節戦略:
足関節を中心とした応答運動によって姿勢を保持する姿勢制御を指します。床面が後方に水平移動した場合に、身体は前方に動揺するため、身体の後面筋を活動させて足関節を中心にバランスをとります。筋活動として腓腹筋、ハムストリングス、脊柱起立筋の活動が起こります。
また、床面が前方に水平移動した場合は、身体は後方に動揺するため、身体の前面筋である前脛骨筋、大腿四頭筋、腹筋群の順番で筋活動が起こります。
足関節戦略は外乱が小さい場合に選択される姿勢制御で、支持面が安定している場合に起こります。
・股関節戦略:
股関節を中心に姿勢制御が起こるものを指します。この時、足関節には逆位相の運動も起こります。床面が後方に水平移動した場合には、筋活動は腹筋群、大腿四頭筋の順番に筋活動が起こります。
また、床面が前方に水平移動した場合には、脊柱起立筋、ハムストリングスと筋活動が順番に起こります。
股関節戦略は外乱動揺が大きい場合や速い場合、支持面が安定していない、狭い場合に選択される姿勢制御となります。
・踏み出し戦略:
これはステップ戦略とも呼ばれ、足関節や股関節戦略では対応できず、支持基底面から外に重心が移動する場合にとる姿勢制御となります。片足を踏み出すことで、新たに支持基底面を形成して姿勢制御をとります。
これを踏み出し戦略と言います。
健常成人ではすべての体性感覚や視覚情報を統合し、立位保持や姿勢制御を行えますが、中枢神経障害や前庭系からの情報が障害されると、上記のような姿勢制御がとれず、転倒に繋がるリスクがあります。
症例において、つまずいた場合に踏み出し戦略がとれるかが転倒リスクを軽減させる評価として自分自身は利用しています。歩行が安定していても、足部クリアランスが低下している歩容や段差昇降時につま先が引っ掛かり前方に転倒する場合が多くみられます。
また、足関節戦略や股関節戦略をとる場合の筋活動を応答順で確認することも姿勢制御がうまく行えているか確認する方法の一つであるため、評価してみてはいかがでしょうか。