臨床経験している中で、股関節周辺の疼痛を訴える症例は多く存在します。しかし、股関節周辺といっても鼠径部や上前腸骨棘、大腿前面など痛みの部位が様々であることが少なくありません。
セラピストの考察する股関節痛と患者が思う痛みとは別物と考えて治療法を考察していかなければいけません。股関節周辺部痛みが必ず股関節が要因とは限らないからです。
身体所見、評価から疼痛の原因をひとつひとつ探っていきましょう。
臨床上、脊柱から股関節周囲への疼痛に繋がる場面を経験してきました。
実際、仙腸関節由来の疼痛が臀部や鼠径部への違和感や疼痛を出現させている場合があります。仙腸関節由来の疼痛であれば、整形テストであるゲンスレンテストやパトリックテストが仙腸関節に対し有用であると思います。
・ゲンスレンテスト:
患者に非検査側の股関節を屈曲位で保持させ、検査側の股関節を伸展させることで疼痛の有無を確認します。
これは、非検査側の股関節屈曲をすることで骨盤を後傾位にさせ、検査側の股関節伸展をすることで、仙腸関節部にストレスを与え、痛みを誘発することができるためです。
実際に疼痛が出現した際は、仙腸関節障害を疑います。
・パトリックテスト:
非検査側の下肢が伸展位で、検査側の足部を非検査側の膝関節近位に位置させます。その後、他動的に股関節を外転・外旋させ、骨盤に対してストレスを与えます。
この動作で疼痛が出現した際も仙腸関節障害を疑います。
これらは仙腸関節に対する痛みの評価を表記していますが、実際の動作は股関節運動も含まれているため、股関節自体の痛みを評価したうえで、仙腸関節障害を評価していく必要があります。
一度、股関節周囲の疼痛で悩まれているセラピストは試してみても良いかもしれません。