後十字靭帯損傷について
膝関節には4つの重要な靭帯が存在します。そのうち後十字靭帯損傷は前十字靭帯の6分の1から7分の1の頻度という報告があります。
後十字靭帯損傷(PCL)の受傷機転は、膝前方からの強打で、スポーツではラグビーなど接触の多いスポーツ、また交通事故や転倒でも受傷します。
急性期症状
後十字靭帯断裂は膝を正面から強打することで受傷し、受傷直後から強い痛みがあり、膝関節は徐々に腫れてきます。
多くの症例では、その痛みと腫れから整形外科を受診しますが、レントゲン検査では骨折所見はなく、膝の打撲と診断されるため、靭帯断裂が診断されない場合がみられます。
その後、徐々に疼痛は改善し、腫れも引いてきますので、日常生活には復帰できます。
慢性期症状
急性期が過ぎて動けるようになっても、違和感が残るのがPCL損傷の特徴です。
ACL損傷では、急激な動作ができない、膝折れが起こるなどの特徴的な症状は出現しません。スポーツなど日常生活で膝の違和感や痛みが出る、腫れるといった一般的な症状が続きます。
半月板損傷をその後の発症すると、そのための痛みが強く出現することもあるので注意が必要です。
日常生活では、座位など同一姿勢を長時間続けると膝に疼くような痛みが出現することがあり、総称としてムービーサインとして言われています。
診断
上記のような受傷機転、急性期、慢性期の症状があればPCL損傷を疑います。
診察所見では、膝関節後方不安定性を示す後方引き出しテスト陽性、sagging徴候陽性などの所見があり、後十字靭帯損傷の診断がなされます。
MRI画像によって診断が確定しますが、半月板損傷や軟骨損傷などの合併損傷の有無を調ベるためにもMRI検査は必要となります。
治療
保存療法では、大腿四頭筋などの筋力強化を行い、膝の安定化を目指します。
膝の後方動揺性が大きくなければ、3か月間の保存療法で日常生活には不自由なく生活できる症例も少なくありません。